Webサイト制作の成功は「要件定義」で9割決まる?進め方と必須項目を解説

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Webサイトの新規制作やリニューアルプロジェクトにおいて、「なんとなく」で進めてしまい、完成後に「思っていたものと違う」「使いにくいサイトができてしまった」と後悔した経験はありませんか? Webサイト制作の成功は、着手前の「要件定義」の精度で9割決まると言っても過言ではありません。

要件定義は、プロジェクトの羅針盤であり、関係者全員の共通認識を築くための「設計図」です。しかし、多くの担当者が「何をどこまで決めればよいのか分からない」と悩むポイントでもあります。

この記事では、Webサイト制作を成功に導くために不可欠な「要件定義」について、その重要性から、具体的な進め方の4ステップ、そして要件定義書に含めるべき必須項目まで、企業のWeb担当者が知っておくべき内容を解説します。

Webサイト制作における要件定義とは?

まず初めに、「要件定義」とは具体的に何を指すのか、なぜそれがWebサイト制作において最も重要と言われるのか、その基本的な概念と、混同されがちな「要求定義」との違いを明確にします。

要件定義はプロジェクトの「設計図」であり「土台」

Webサイト制作における要件定義とは、「そのWebサイトで何を実現したいのか」「そのためにどのような機能や仕様が必要か」を明確にし、文書化することを指します。

家を建てるプロセスに例えると、要件定義は「設計図」であり、建物を支える「土台」にあたります。設計図が曖昧だったり、土台が脆弱だったりすれば、どれだけ立派な柱や壁(デザインやコーディング)を用意しても、安全で住みやすい家(=成果の出るWebサイト)は完成しません。

要件定義が不十分なままプロジェクトが進むと、「必要な機能が漏れていた」「デザインが目的と合致しない」といった問題が後工程で発覚し、大規模な手戻り(修正作業)が発生します。これは、スケジュール遅延や追加コストの発生に直結し、プロジェクト失敗の最大の原因となります。

「要求定義」と「要件定義」の違い

要件定義とよく似た言葉に「要求定義」があります。この二つは明確に異なります。

要求定義

主に発注側(クライアント)の「要望」や「期待」をまとめたものです。「もっと多くの人に資料請求してほしい」「競合他社よりも洗練されたイメージにしたい」といった、やや抽象的で定性的な「やりたいこと(What)」が中心です。

要件定義

「要求定義」で出た要望を実現するための「具体的な仕様や条件」に落とし込む作業です。制作会社(受注側)が専門的な知見をもって、「資料請求を増やすために、フォームの入力項目を最適化し、導線をこう改善する」「洗練されたイメージのために、このブランドガイドラインに沿ったデザインを採用する」といった「実現する方法(How)」を定義します。

発注側の「要求」をヒアリングし、それをWebの専門家が「要件」として整理・具体化する、という流れが一般的です。

なぜ要件定義が重要なのか?

要件定義が重要視される理由は、主に以下の3点に集約されます。

関係者間の「認識のズレ」を防ぐため

プロジェクトには、発注側の担当者、決裁者、制作会社のディレクター、デザイナー、エンジニアなど、多くの人が関わります。要件定義書という「共通言語(設計図)」がなければ、それぞれが別のゴールを想像してしまい、必ず「こんなはずではなかった」というズレが生じます。

プロジェクトのゴールを明確にするため

「なぜこのWebサイトを作るのか?」という目的が曖昧なままでは、最適なサイトは作れません。要件定義で目的(KGI/KPI)を明確にすることで、デザインや機能の「要・不要」を判断する際の明確な「ものさし」ができます。

予算とスケジュールの精度を高めるため

「何を」「どこまで」作るかが明確になって初めて、正確な工数(=費用)とスケジュールを見積もることが可能になります。「とりあえず作ってみよう」では、必ず予算オーバーや納期遅延を招きます。

    Webサイトの要件定義を進める4つのステップ

    要件定義の重要性を理解したところで、次に「具体的にどのような手順で進めていけばよいのか」を、大きく4つのステップに分けて解説します。

    ステップ1:現状分析と課題の整理

    まずは「今、どうなっているのか(As-Is)」を徹底的に洗い出します。リニューアルの場合は、既存サイトのアクセス解析データ(訪問者数、離脱率、コンバージョン率など)を分析し、デザイン、コンテンツ、機能、運用体制の各側面から「うまくいっている点」と「問題点」を整理します。

    新規制作の場合でも、自社のビジネス課題、競合他社の動向、市場のニーズなどを分析し、「なぜ今、Webサイトが必要なのか」という根本的な課題を明確にします。

    ステップ2:仮説の立案と方向性の策定

    現状の課題が明確になったら、次は「どうあるべきか」という理想の姿を描きます。

    ステップ1で出た課題を解決するために、「Webサイトをどのように活用すべきか」という仮説を立てます。そして、プロジェクトの「目的(例:新規顧客からの問い合わせを月20件獲得する)」「ターゲット(誰に届けたいか)」「コンセプト(どのような価値を提供するか)」といった、プロジェクトの根幹となる方向性を定めます。

    ステップ3:関係各所との合意形成

    ステップ2で定めた方向性や、実装したい機能について、社内の関係者(上司、関連部署、経営層など)や、制作を依頼するパートナー(制作会社)とすり合わせ、合意を形成します。

    特に重要なのが、「やること」と「やらないこと」を明確に線引きすることです。予算とリソースは有限です。「あれもしたい、これもしたい」という要望をすべて盛り込もうとすると、プロジェクトは必ず破綻します。定めた「目的」に照らし合わせ、優先順位を決定することが不可欠です。

    ステップ4:要件定義書の作成

    ステップ3で合意した内容を、誰が見ても理解できるように「要件定義書」というドキュメントにまとめます。この文書が、今後のデザイン制作やシステム開発における唯一の「指示書」となります。

    一度合意した要件定義書は、原則としてプロジェクトの途中で安易に変更してはいけません。変更が必要な場合は、必ず関係者間で再合意し、スケジュールや予算への影響を明確にする必要があります。

    Webサイト制作の要件定義書に含めるべき必須項目

    ステップ4で作成する「要件定義書」は、プロジェクトの設計図です。抜け漏れがあると、後々大きなトラブルにつながります。ここでは、要件定義書に最低限含めるべき必須項目を5つのカテゴリに分けて解説します。

    プロジェクトの基礎(目的・背景・ターゲット)

    • プロジェクトの背景・目的:なぜこのプロジェクトを行うのか、最終的に何を達成したいのか(KGI/KPI)。
    • ターゲットユーザー:サイトを誰に使ってほしいのか。可能であれば、具体的な人物像である「ペルソナ」を設定します。
    • コンセプト・サイトの役割:ターゲットに対し、どのような価値(情報、体験)を提供するサイトなのか。

    プロジェクト管理(体制・予算・スケジュール)

    • プロジェクト体制:社内、社外(制作会社)を含めた関係者と、それぞれの役割・責任範囲(誰が何を決定するのか)。
    • 予算:プロジェクト全体(制作費、サーバー費、運用費など)の予算と、見積もりの範囲。
    • スケジュール:各工程(要件定義、デザイン、開発、テスト、公開)の期限、マイルストーン。

    サイト設計(サイトマップ・機能要件)

    • サイトマップ(サイト構造図):Webサイト全体のページ構成と階層構造。
    • ワイヤーフレーム(画面設計図):主要ページのレイアウト案(どこに何を配置するか)。
    • 機能要件:お問い合わせフォーム、CMS(コンテンツ管理システム)、会員登録、EC機能など、サイトに必要な「機能」の詳細仕様。(詳細は次章で解説)

    品質・技術要件(非機能・インフラ・セキュリティ)

    • 非機能要件:表示速度、セキュリティ対策、対応ブラウザ・デバイス(レスポンシブ対応の仕様)など、サイトの「品質」に関する要件。(詳細は次章で解説)
    • インフラ要件:使用するサーバー(共用、専用、クラウドなど)、ドメインの管理方法。
    • 使用技術:使用するプログラミング言語、CMSの種類、フレームワークなど。

    公開と運用(リリース計画・保守体制)

    • リリース(公開)計画:サイト公開の手順、データ移行の有無、公開前のテスト仕様。
    • 運用・保守体制:サイト公開後、誰がどのようにコンテンツを更新するのか。サーバーの監視や障害時の対応(保守契約)をどうするか。

    要件定義の「機能要件」と「非機能要件」の中身

    要件定義書の中でも、特に「機能要件」と「非機能要件」は、制作会社との認識齟齬が生まれやすい重要なポイントです。この二つの違いと、それぞれの具体的な中身について詳しく見ていきましょう。

    機能要件

    機能要件とは、そのWebサイトがユーザーや管理者に対して「何ができるか」を定義するものです。ユーザーが直接触れる、目に見える機能が中心となります。

    • お問い合わせフォーム:入力項目、確認画面の有無、自動返信メールの内容、管理者への通知方法。
    • CMS(ブログ機能):記事の作成・編集・削除、カテゴリ分類、プレビュー機能、公開予約。
    • 会員機能:新規登録、ログイン・ログアウト、パスワード再発行、マイページ機能。
    • 検索機能:キーワード検索、絞り込み検索(カテゴリ、価格帯など)。

    これらを「お問い合わせ機能が欲しい」といったレベルではなく、「誰が」「どの画面で」「何をすると」「どうなる」まで具体的に定義する必要があります。

    非機能要件

    非機能要件とは、機能要件以外の「Webサイトの品質や信頼性」に関する要件です。ユーザーが直接操作するものではありませんが、サイトの使いやすさ(UX)や安全性に直結します。

    • パフォーマンス(性能):ページの表示速度(例:主要ページは3秒以内に表示)。
    • 可用性(安定性):月間10万PVに耐えられるか、サーバーがダウンした際の復旧目標時間。
    • セキュリティ:SSL(暗号化通信)の導入、不正アクセス対策、個人情報の取り扱い。
    • 互換性(対応環境):対応するOS(Windows, Mac, iOS, Android)、ブラウザ(Chrome, Safari, Edge)とそのバージョン。
    • 運用・保守性:障害発生時の連絡体制、バックアップの頻度。

    なぜ非機能要件が重要なのか?

    Webサイト制作では、目に見える「機能要件」ばかりに注目が集まりがちです。しかし、非機能要件は、企業の「信頼」に直結します。

    いくらデザインが美しく、機能が豊富でも、「サイトの表示が極端に遅い」「スマートフォンでレイアウトが崩れる」「個人情報が漏洩する」といった問題が起これば、ユーザーは二度と訪問してくれません。 特にセキュリティ要件やパフォーマンス要件は、後から対応しようとすると莫大なコストがかかるため、要件定義の段階で制作会社としっかり協議し、合意しておくことが極めて重要です。

    Webサイト要件定義を成功させるためのポイント

    最後に、これまでのステップや項目を踏まえた上で、Web担当者として要件定義を成功に導くために意識すべき、3つの重要なポイントをご紹介します。

    5W1Hで関係者の認識を徹底的に揃える

    要件定義の最大の敵は「曖昧さ」です。「いい感じに」「よしなに」「普通はこうだよね」といった言葉は、関係者間の認識のズレを生む温床です。

    すべての要件について、5W1H(When: いつ、Where: どこで、Who: 誰が、What: 何を、Why: なぜ、How: どのように)を明確にすることを心がけてください。特に「Why(なぜそれが必要なのか)」を常に問い続けることで、プロジェクトの目的に立ち返り、本当に必要な要件だけを取捨選択できます。

    ペルソナ・CJMを活用し「ユーザー視点」を貫く

    プロジェクトを進めていると、どうしても社内の都合や「担当者の好み」が優先されがちです。しかし、Webサイトは最終的に「ユーザー」に使ってもらうものです。

    「この機能は、本当にユーザー(ペルソナ)のためになるか?」「ユーザーが目的を達成するまでの行動(CJM=カスタマージャーニーマップ)において、このページは適切か?」といった「ユーザー視点」を判断基準の中心に据えましょう。ユーザー視点を貫くことが、結果としてビジネスの成果(コンバージョン)につながります。

    制作会社(専門家)を早期に巻き込み、実現可能性を担保する

    要件定義を発注側(Web担当者)だけで完璧に作り上げるのは困難です。技術的な知見がなければ、「実現不可能な要件」や「費用対効果の低い要件」を盛り込んでしまうリスクがあります。

    信頼できる制作会社(パートナー)をなるべく早い段階(理想はステップ1〜2)から巻き込み、専門家の知見を借りながら進めることが、手戻りを防ぐ最善策です。専門家と対等に議論するためにも、Web担当者自身が「自社の課題」と「達成したい目的」を誰よりも深く理解しておくことが求められます。

    WEBサイトの制作はYUTORIにご相談ください

    この記事ではWebサイト制作における要件定義の重要性を解説しました。株式会社YUTORIは、「あなたのビジネスに”ゆとり”を提供します。」というスローガンのもと、企業のWebサイト制作を支援しています。

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