「採用活動を頑張っているのに、なかなか思うような人材が集まらない」「毎年同じ方法で採用しているが、いつも欠員補充に追われてしまう」——そんな悩みを抱える人事担当者は少なくありません。その原因の多くは、採用活動の土台となる「採用計画」が不十分なことにあります。採用計画とは、いつ・どんな人材を・何人・どのように採用するかを事前に定めた指針のことです。本記事では、採用計画の基本的な意味から立案ステップ、失敗しないためのポイントまでを網羅的に解説します。これから採用計画を作成しようとしている方はもちろん、毎年の採用活動に課題を感じている方もぜひ参考にしてください。
目次

採用計画とは?
採用計画とは、企業が採用活動を行う際の指針となる計画のことです。「いつまでに」「どの部門で」「どのような人材を」「何人」採用するかを具体的に定め、戦略的に人材を確保することを目的とします。行き当たりばったりの採用活動を防ぎ、経営目標の実現に必要な人材を適切なタイミングで揃えるための羅針盤といえます。採用計画があることで、採用担当者・現場・経営層が同じゴールに向かって連携しやすくなり、採用活動全体の精度が格段に高まります。
採用計画に含まれる主な項目
採用計画には、採用人数・採用する職種や部門・求める人物像(採用要件)・採用手法・採用スケジュール・選考フロー・採用コストと予算配分など、多岐にわたる項目が含まれます。また、選考の合否基準や内定後のフォロー方針まで盛り込む企業も増えています。これらの項目をあらかじめ決めておくことで、採用担当者と現場担当者の間での認識のズレを防ぎ、スムーズな採用活動につながります。どこまで細かく設定するかは企業の規模や採用状況によって異なりますが、最低限「人数・要件・手法・スケジュール・予算」の5つは明文化しておくことが望まれます。
要員計画・人員計画との違い
採用計画と混同されやすい言葉に「要員計画」と「人員計画」があります。人員計画とは、事業目標を達成するために必要な人員の総数や配置を検討する計画のことで、採用だけでなく異動・出向・退職も含めた幅広い人事施策を対象にします。要員計画はその中でも、業務量に対して何人のスタッフが必要かを算出する計画です。採用計画はこれらをもとに「外部から何人を採用するか」という実行フェーズに落とし込んだものと考えると分かりやすいでしょう。三者を正しく区別し連動させることが、精度の高い人事戦略の実現につながります。
採用計画の必要性
「大まかな方向性さえ決まっていれば、計画書を作り込まなくても採用できる」と考える方もいるかもしれません。しかし、採用計画を立てずに動き出すことには確かなリスクが伴います。一方で、きちんと計画を策定することで得られるメリットも数多くあります。まずは「なぜ採用計画が必要なのか」をしっかりと理解しましょう。
計画なしで起こりがちな失敗
採用計画が不十分な場合、次の3つの失敗が起こりやすくなります。
①ミスマッチ採用:採用要件が曖昧なまま選考を進めることで、自社に合わない人材を採用してしまい、早期離職につながるケースです。
②採用遅延:スケジュールを決めていないと、気づいたときには繁忙期と重なって採用が間に合わないことがあります。
③コストの浪費:ターゲットが不明確なまま求人を出し続けると、広告費や採用担当者の工数だけがかかり、費用対効果の低い採用活動が続いてしまいます。これらはすべて、事前の計画策定で防げる失敗です。
採用計画を立てることで得られるメリット
採用計画を丁寧に策定すると、大きく3つのメリットが得られます。
①採用品質の向上:求める人物像を明確にすることで、ターゲットに刺さる採用メッセージや選考基準を設計でき、自社にフィットした人材と出会いやすくなります。②関係者間の連携強化:計画書を共有することで、現場マネージャーや経営層との認識を統一しやすくなり、スムーズな選考進行が可能になります。
③PDCAの実行:採用計画という基準があることで、実績との比較・振り返りが行いやすくなり、次年度の採用改善につなげることができます。
経営戦略と採用活動を連動させる重要性
採用計画の質を高めるうえで欠かせないのが、経営戦略との連動です。事業が拡大するフェーズ、新規事業を立ち上げるフェーズ、既存事業を守るフェーズでは、必要な人材のタイプもスキルも大きく異なります。経営計画を理解せずに採用計画を立てると、現場に必要な人材と採用した人材がかみ合わず、事業推進の足かせになることもあります。人事担当者は採用活動を「欠員を埋める作業」ではなく、「経営課題を人材で解決するプロセス」と捉え、経営層や事業部との対話を通じて計画を策定することが重要です。
採用計画の立てる6つのステップ
採用計画の必要性が理解できたら、次は実際の立案プロセスに入りましょう。採用計画の立て方にはいくつかのアプローチがありますが、ここでは多くの企業が実践している6つのステップを順番に解説します。各ステップの目的を理解しながら進めることで、実行力の高い採用計画が出来上がります。
STEP1. 現状分析と採用ニーズの把握(経営・事業計画の確認)
採用計画の第一歩は、自社の現状を正確に把握することです。具体的には、各部門の現在の人員数・スキルマップ・今後の退職見込み人数などを整理し、「どこに・どれだけの人手が不足するか」を明らかにします。同時に、経営計画や事業計画を確認し、来年度・3年後・5年後の事業規模や新規展開に応じて、どのような職種・スキルを持つ人材が何人必要になるかを見通すことが重要です。この現状分析の精度が、採用計画全体の土台を左右します。
STEP2. 採用人数・採用要件を決める
現状分析を踏まえ、採用する人数と要件を設定します。採用人数は「充足すべき欠員数+事業拡大に伴う増員数」をベースに算出します。採用要件とは、応募者に求めるスキル・経験・資格・人物像などのことです。ここで注意が必要なのは、要件を欲張りすぎないことです。「TOEICスコア800点以上かつマネジメント経験3年以上かつプログラミングスキルあり」のように要件を盛り込みすぎると、応募母集団が極端に絞られてしまいます。現実の採用市場を意識しながら、必須条件と歓迎条件を分けて設定しましょう。
STEP3. ターゲット(ペルソナ)を設計する
採用要件が決まったら、より具体的なターゲット像(ペルソナ)を設計します。ペルソナとは、採用したい候補者の年齢・職歴・価値観・キャリア志向・転職理由などを具体的に描いた人物像のことです。「30代前半で、成長中の環境でリーダーシップを発揮したい志向の営業職経験者」といったように、実在する人物を想定して設計します。ペルソナを明確にすることで、求人票のメッセージ設計や採用チャネルの選定が格段にしやすくなります。現場の社員にヒアリングしたり、自社の活躍社員を分析したりすることが、精度の高いペルソナ設計につながります。
STEP4. 採用手法・採用チャネルを選定する
ターゲットが決まったら、そのターゲットにリーチできる採用手法・チャネルを選定します。主な採用手法には、求人サイトへの掲載・人材紹介(エージェント)・ダイレクトリクルーティング・自社採用サイト・SNS採用・リファラル採用(社員紹介)などがあります。手法の選定は「ターゲットはどこにいるか」「予算はどれくらいか」「緊急度はどの程度か」という観点で判断します。即戦力の中途採用を急ぐなら人材紹介、長期的に母集団を形成したいなら自社メディアやSNS採用が有効です。複数チャネルを組み合わせることで、採用機会を最大化できます。
STEP5. 選考フローと役割分担を決める
採用手法が決まったら、書類選考・一次面接・二次面接・最終面接・内定といった選考フローを設計し、各ステップの担当者と評価基準を明確にします。「誰が面接を担当し」「どのような基準で合否を判断し」「いつまでに結果を通知するか」を事前に決めておくことで、選考スピードが上がり、候補者の他社流出を防ぐことができます。また、面接担当者に評価シートを共有し、共通の軸で選考ができる状態を整えておくことも重要です。属人的な選考判断は採用ミスマッチの温床になるため、仕組みとして整備しましょう。
STEP6. 採用スケジュールを組む
最後に、採用活動全体のスケジュールを組みます。「いつ求人を公開し」「いつ選考を開始し」「いつまでに内定を出し」「いつ入社してもらうか」を逆算して設定します。新卒採用の場合は政府が定めた就活スケジュール(広報解禁・選考解禁・内定解禁)を起点に計画を立てます。中途採用は通年で行えるため、現場が必要とする時期から逆算してスケジューリングします。スケジュールを可視化することで、採用担当者はもちろん、面接に協力する現場担当者も動きやすくなります。
採用計画書に盛り込むべき必須項目とテンプレート例
採用計画の方向性が固まったら、計画書として文書化しましょう。採用計画書を作成することで、関係者間の情報共有がしやすくなり、進捗管理も効率化されます。ここでは採用計画書の主要項目と、新卒・中途それぞれのテンプレートイメージを紹介します。自社の状況に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
採用計画書のフォーマット(主要項目一覧)
採用計画書に盛り込むべき主な項目は以下のとおりです。
| カテゴリ | 記載項目の例 |
|---|---|
| 採用目標 | 採用人数、採用職種・部門、採用時期 |
| 採用要件 | 必須スキル・経験(MUST)、歓迎スキル(WANT)、人物像 |
| ターゲット設計 | ペルソナ像(年齢・職歴・価値観など) |
| 採用手法 | 活用する求人媒体・エージェント・チャネル |
| 予算 | 媒体掲載費・エージェント費用・採用担当者の工数 |
| 選考フロー | 書類〜内定までの各ステップと担当者、評価基準 |
| スケジュール | 求人公開〜入社までのマイルストーン |
| KPI | 応募数・面接通過率・内定承諾率などの目標値 |
上記の項目をExcelやGoogleスプレッドシートでフォーマット化しておくと、年度ごとの更新・比較が容易になります。
新卒採用の計画書テンプレート例
新卒採用の計画書では、政府の就活スケジュールに準拠した時系列管理が重要です。以下は計画書の基本構成の例です。
- 採用目標:〇〇年度 新卒採用 〇名(営業職〇名、エンジニア〇名)
- 採用要件:学歴・学部不問/コミュニケーション能力・主体性を重視
- 採用手法:合同説明会・自社採用サイト・逆求人型ナビサイト
- スケジュール:3月〜広報開始 → 6月〜選考開始 → 10月〜内定通知
- KPI:エントリー数〇名・会社説明会参加者〇名・内定承諾率〇%
- 担当者・役割分担:採用担当〇名・面接官リスト・現場部門窓口
新卒採用は長期戦になるため、各ステップの進捗を月次でモニタリングできる管理表と合わせて運用することをおすすめします。
中途採用の計画書テンプレート
中途採用の計画書は、新卒よりも職種・スキル要件の具体性が求められます。以下は基本構成の例です。
- 採用目標:〇〇職 〇名(即戦力として〇ヶ月以内の配属を想定)
- 採用要件:〇〇業界での実務経験〇年以上・〇〇スキル必須
- 採用手法:人材紹介(エージェント)・転職サイト・ダイレクトリクルーティング
- スケジュール:求人公開〜内定まで最短〇週間を目標
- 予算:〇〇万円(内訳:エージェント成功報酬〇%・媒体掲載費〇万円)
- KPI:書類選考通過率・面接辞退率・内定承諾率の目標値を設定
中途採用はスピードが重要です。選考の各ステップに期限を設け、候補者を待たせない運用を意識しましょう。
新卒採用・中途採用における計画の違いと注意点
採用計画の立て方の基本は共通していますが、採用の種別によって意識すべきポイントは異なります。新卒採用・中途採用・アルバイト採用それぞれの特性を理解したうえで、それぞれに合った計画を設計することが、採用の精度を高める近道です。
新卒採用計画のポイント
新卒採用には、政府が定めた就活スケジュールが存在します。現行のルールでは、3月1日以降に広報活動が解禁、6月1日以降に選考が解禁、10月1日以降が正式内定日とされています(2026年5月時点)。このスケジュールを踏まえ、遅くとも前年の秋頃には採用計画の大枠を固めておく必要があります。また、新卒採用は競合他社と同じ時期に争奪戦になるため、自社の採用ブランディング(なぜ自社に入社すべきか)を明確にしておくことが差別化のカギになります。インターンシップの活用や早期接点づくりも計画に組み込むと効果的です。
中途採用計画のポイント
中途採用は新卒と異なり、通年を通じて随時行えるのが特徴です。一方で、転職活動中の候補者は複数の企業を並行して検討していることが多く、選考スピードが遅いと他社に流れてしまうリスクがあります。採用計画を立てる際は「求人公開から内定まで最短何週間で進めるか」という速度目標を設定しておくことが重要です。また、採用が欠員補充ベースになりやすい中途採用においても、事業計画に基づく中長期の人材確保ロードマップを描くことで、場当たり的な採用から脱却できます。
アルバイト・パート採用の場合はどう違う?
アルバイト・パート採用は、正社員採用と比べて採用リードタイムが短く、繁忙期に合わせた増員ニーズが発生しやすい特徴があります。そのため採用計画においては、季節変動・シフト充足率・時給水準の市場比較といった要素を組み込むことが求められます。また、アルバイトは離職率が高い傾向にあるため、定着施策(オンボーディング・シフト配慮・職場環境の改善)まで視野に入れた計画設計が長期的な人員安定につながります。採用チャネルはアルバイト専門の求人サイトやSNS、地域メディアなど、正社員採用とは異なるものを活用しましょう。
採用計画を成功させるためのポイント
採用計画を立てること自体が目的ではなく、計画を通じて「必要な人材を、必要なタイミングで採用すること」が本来のゴールです。計画の策定段階でいくつかのポイントを押さえておくことで、実行フェーズでの精度が大きく変わります。ここでは特に重要な5つのポイントを紹介します。
経営・現場と目線を合わせる(人事だけで決めない)
採用計画を人事部門だけでつくることは避けましょう。現場が求めるスキルや人物像は、現場の管理職やチームリーダーが最もよく知っています。計画策定の段階から現場をヒアリングに巻き込み、経営層にも計画の方向性を確認することで、採用後の「こんな人を求めていたのではない」というミスマッチを防ぐことができます。また、現場が採用計画の策定に関わることで、面接や選考への協力体制も自然と整いやすくなります。採用は人事だけの仕事ではなく、会社全体で取り組む経営課題という認識を組織で共有しましょう。
要件はMUST/WANTで優先順位をつける
採用要件を設定する際は、「この要件がなければ採用しない(MUST)」と「あれば望ましい(WANT)」を明確に分けることが重要です。すべての要件をMUSTにしてしまうと、応募母集団が極端に絞られ、採用活動が長期化・難航します。MUSTは本当に業務遂行に不可欠なものに限定し、WANTは入社後の成長や周囲のサポートで補える要素として捉えましょう。この区分を採用に関わる全員で共有しておくことで、面接の評価ブレを防ぎ、選考の一貫性が保たれます。
採用市場・競合他社の動向を把握する
採用計画は自社の内部事情だけで完結するものではありません。採用市場全体の動向(有効求人倍率・転職者数の推移・平均年収水準)や競合他社の採用状況も把握したうえで計画を立てることが重要です。競合が給与水準を引き上げた場合、自社の採用条件を見直す必要が生じることもあります。採用媒体の担当者やエージェントから市場情報を定期的に収集する習慣をつけておくと、計画の現実性を高められます。「自社だけが孤島で採用している」という感覚から脱し、採用市場における自社のポジションを客観的に捉えましょう。
PDCAを回し計画を随時アップデートする
採用計画は一度作ったら終わりではなく、実行しながら継続的にアップデートするものです。採用活動の各ステップで「応募数は想定通りか」「面接通過率はどうか」「内定辞退はどこで発生しているか」などのデータを収集・分析し、計画との乖離が生じている部分については迅速に対策を打ちます。年度終わりには採用活動全体の振り返りを行い、翌年度の計画に反映させましょう。このPDCAサイクルを継続することで、採用活動のノウハウが社内に蓄積され、年々採用力が高まっていきます。
採用ゴールを「入社後の活躍」まで設定する
採用計画のゴールを「内定承諾」で終わらせてしまうと、入社後の早期離職という落とし穴にはまりやすくなります。採用計画の段階から、入社後のオンボーディング・研修・配属後のフォロー体制まで視野に入れた設計をしておきましょう。「入社してから半年後に、この人材がどのような状態にあることを目指すか」というゴールイメージを持つことで、採用時の評価軸や選考での質問設計も変わってきます。採用と育成を切り離さずに一体で考えることが、長期的に活躍できる人材の確保につながります。
採用計画は「経営戦略の入口」と捉えよう
採用計画とは、単に「何人採る」を決める作業ではありません。経営戦略を人材戦略に落とし込む、会社の未来をつくるための重要なプロセスです。本記事でお伝えした6つのステップを実践し、経営・現場と連携しながら計画を策定することで、採用活動の質は大きく向上します。
しかし、「採用計画を立てても、思うように採用が進まない」「ノウハウが社内に蓄積されず、毎年同じ課題が繰り返される」「外部委託に頼りすぎて、自社の採用力が育っていない」といった状況に陥っている企業様も少なくないのではないでしょうか。
そのような採用課題を包括的に解決するのが、株式会社YUTORIが提供する「採用コンソーシアム」です。採用コンソーシアムは、媒体社・原稿作成・HP制作・広告分析・SNS運用など、各分野の専門パートナー企業が連携し、貴社の採用活動全体を多面的にサポートする仕組みです。
単なる外部委託ではなく、貴社の採用チームの一員として伴走しながら、ペイドメディアの最適化による採用コスト削減・オウンドメディア構築による自社採用力の内製化・アーンドメディア活用による応募者の質向上まで、短期的な成果と中長期的な採用力強化を同時に実現します。実際に、あるクライアント様ではオウンドメディア構築により応募単価を88%削減した事例も生まれています。
採用活動に課題を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。



