少子高齢化による労働力不足や働き方の多様化を背景に、日本特有の新卒一括採用を見直し、通年採用へ移行、あるいは併用する企業が増えています。しかし、「具体的にどんなメリットがあるの?」「導入したいが何から始めればいいか分からない」といったお悩みを抱える採用担当者様も多いのではないでしょうか。
本記事では、通年採用の基本的な仕組みから、企業が得られる5つの主要なメリット、そして導入前に知っておくべき注意点と、成功に導くための具体的な戦略ポイントまでを網羅的に解説します。
通年採用とは?新卒一括採用との違いから見る現代の採用トレンド
企業の持続的な成長のためには、事業戦略と連動した人材獲得が不可欠です。その中で、従来の画一的な採用手法から脱却し、より柔軟な人材獲得を可能にする「通年採用」が新たなスタンダードとなりつつあります。まずは、その定義と注目される背景を正しく理解しましょう。
通年採用の定義と基本的な仕組み
通年採用とは、特定の期間に限定せず、企業が必要なタイミングで年間を通じて採用活動を行う手法のことです。新卒や第二新卒、中途採用といった枠組みにとらわれず、自社の事業計画や人員計画に基づいて、欠員補充や新規事業の立ち上げなどに合わせて機動的に人材を募集・選考します。
採用期間から対象者まで、新卒一括採用との比較
新卒一括採用と通年採用の最も大きな違いは、「時間」と「対象者」の概念です。
【採用期間】
・新卒一括採用: 主に3月の広報活動開始から6月以降の選考開始という、経団連の指針に基づいた特定の期間に集中します。
・通年採用: 年間を通じて、企業の任意のタイミングで募集・選考を行います。
【採用対象者】
・新卒一括採用: 翌年春に卒業予定の学生がメインターゲットです。
・通年採用: 卒業時期を問わない既卒者、第二新卒、海外留学生、秋卒業の学生、転職希望者など、多様な経歴を持つ人材が対象となります。
なぜ今、通年採用が注目されるのか?経団連の方針と売り手市場の背景
通年採用が注目される背景には、大きく2つの要因があります。一つは、経団連が2021年卒採用から採用選考に関する指針を事実上廃止し、企業がより自由に採用活動を行える環境が整ったことです。もう一つは、深刻な人手不足による「売り手市場」の加速です。限られた期間での採用活動では優秀な人材の獲得競争が激化するため、企業は年間を通じて潜在的な候補者と接点を持つ必要性に迫られています。これらの変化が、通年採用という柔軟なスタイルを後押ししているのです。
企業が通年採用を導入する5つの主要メリット
通年採用は、単に採用時期を増やすだけの手法ではありません。正しく運用することで、企業の採用力そのものを底上げする多くの戦略的メリットをもたらします。ここでは、企業が通年採用を導入することで得られる5つの主要なメリットを具体的に解説します。
メリット1:多様な人材へのアプローチと質の高い母集団形成
新卒一括採用では出会えなかった層にアプローチできるのが最大のメリットです。例えば、海外の大学を卒業した留学生や日本人学生、研究や学業に専念するために就職活動の時期をずらしたい学生、早期離職したものの高いポテンシャルを持つ第二新卒など、多様なバックグラウンドを持つ人材と出会う機会が格段に増えます。これにより、画一的ではない価値観やスキルを持つ人材が集まり、結果として質の高い母集団を形成できます。
メリット2:採用ミスマッチの低減と選考精度の向上
通年採用では、一括採用のように短期間で大量の応募者を捌く必要がありません。そのため、候補者一人ひとりとじっくり向き合う時間を確保できます。丁寧な面談や複数回の面接、長期インターンシップなどを通じて、候補者のスキルや人柄だけでなく、自社の文化やビジョンとの相性(カルチャーフィット)を深く見極めることが可能です。これは、入社後の早期離職といった採用ミスマッチの低減に直結し、定着率の向上にも繋がります。
メリット3:事業計画に連動した柔軟で機動的な人材確保
ビジネス環境の変化が激しい現代において、企業の事業計画は常に変動します。急な新規プロジェクトの立ち上げや事業拡大に伴い、特定のスキルを持つ人材が急遽必要になるケースも少なくありません。通年採用を導入していれば、「年に一度」の採用タイミングを待つことなく、ビジネスの要請に応じて迅速かつ柔軟に人材を確保することができます。
メリット4:内定辞退・欠員発生リスクへの効果的な対応力
苦労して出した内定が辞退されたり、予期せぬ退職者が出て欠員が発生したりするのは、企業にとって大きな痛手です。新卒一括採用の場合、採用期間が終了しているとその年度内の補充は困難です。しかし、通年採用であれば常に採用活動を継続しているため、欠員が発生してもスムーズに次の候補者の選考を進めることができ、事業運営への影響を最小限に抑えることができます。
メリット5:採用競争における優位性の確保と潜在層へのアプローチ
多くの企業が活動を休止する時期にも採用活動を続けることで、競争を避けながら優秀な人材にアプローチできます。特に、明確な転職意欲はないものの「良い企業があれば話を聞きたい」と考えている「転職潜在層」と接触できる可能性が高まります。他社に先んじてアプローチすることで、採用競争において優位なポジションを築くことができるのです。
デメリットも理解する|通年採用の注意点と乗り越えるべき課題
多くのメリットがある一方で、通年採用の導入には乗り越えるべき課題も存在します。メリットだけに目を向けて拙速に導入すると、かえって現場が混乱し、期待した成果が得られない可能性があります。ここでは、事前に把握しておくべき注意点を解説します。
課題1:採用コストと担当者の業務負担の増大
採用活動を年間を通じて行うことは、採用担当者の業務が恒常化することを意味します。求人広告費やイベント出展費などの採用コストが年間を通じて発生する可能性があるほか、面接日程の調整や応募者管理といった実務的な負担も増大します。担当者の疲弊や人件費の増加に繋がる可能性があるため、業務効率化の仕組み作りが不可欠です。
課題2:入社時期の分散による教育・研修の非効率化
新入社員の入社時期がバラバラになるため、従来のような集合型の新人研修を実施するのが難しくなります。一人または少数の新入社員のために都度研修を行うのは非効率であり、教育担当者の負担も大きくなります。また、同期入社の仲間がいないことによる新入社員の孤立や、企業文化への馴染みにくさといった課題も懸念されます。
課題3:応募者の質と志望度のばらつきという懸念
通年採用では多様な人材に出会える一方、時期によっては応募者の質や志望度にばらつきが出ることがあります。例えば、一括採用の選考に乗り遅れた、あるいは他社で不採用となった学生からの応募が増える可能性も否定できません。自社への志望度が低い応募者も混在しやすくなるため、選考段階での見極めがより重要になります。
課題4:一括採用期における大手企業との競合
通年採用を導入したからといって、春から夏にかけての従来の一括採用期を無視できるわけではありません。この時期は学生の活動が最も活発になるため、多くの企業が採用活動を強化します。結果として、知名度やブランド力で勝る大手企業との厳しい人材獲得競争に巻き込まれる状況は変わりません。
通年採用を成功に導く5つの戦略的ポイント
通年採用のデメリットを克服し、メリットを最大化するためには、戦略的な視点に基づいた仕組みの構築が不可欠です。ここでは、通年採用を成功させるために押さえるべき5つのポイントを具体的に紹介します。
ポイント1:採用チャネルの多様化と最適化(ダイレクトリクルーティング・リファラル)
従来の求人サイトに掲載して応募を「待つ」だけの採用から脱却し、企業側から積極的にアプローチする「攻め」の採用手法を取り入れましょう。SNSやOB/OG訪問アプリを活用したダイレクトリクルーティングや、社員の紹介によるリファラル採用は、自社が求める人材に直接アプローチできる効果的な手法です。各チャネルの特性を理解し、自社の採用ターゲットに合わせて最適に組み合わせることが重要です。
ポイント2:採用プロセスの再構築とITツール活用による効率化
採用担当者の業務負担を軽減するため、採用プロセス全体の効率化を図りましょう。ATS(採用管理システム)を導入すれば、応募者情報の一元管理、選考進捗の可視化、面接日程の自動調整などが可能になり、事務作業を大幅に削減できます。また、Web面接ツールを活用すれば、遠方の候補者との面接も容易になり、選考のスピードアップに繋がります。
ポイント3:柔軟な受け入れ・教育体制の構築(モジュール型研修・メンター制度)
入社時期の分散に対応するため、教育・研修体制を再設計する必要があります。必要な知識やスキルを単元ごとに学べるモジュール型の研修プログラムや、オンラインで学習できるe-ラーニングコンテンツを用意すれば、新入社員は自分のペースで学習を進められます。また、年齢の近い先輩社員が相談役となるメンター制度を導入することで、新入社員の早期の立ち上がりと孤立感の解消をサポートできます。
ポイント4:「攻め」と「待ち」を組み合わせたハイブリッド採用戦略
通年採用を「一括採用の代替」と考えるのではなく、両者を組み合わせたハイブリッド戦略が有効です。学生の動きが活発な時期には一括採用的なアプローチで母集団を確保しつつ、それ以外の時期にはダイレクトリクルーティングなどで特定のスキルを持つ人材や潜在層にアプローチするなど、「待ち」と「攻め」のバランスを取ることで、年間を通じて効率的かつ効果的な採用活動が可能になります。
ポイント5:候補者に選ばれるための採用ブランディング強化
年間を通じて候補者と接点を持つ通年採用では、「この会社で働きたい」と思わせる魅力、すなわち採用ブランディングが極めて重要になります。自社のビジョンやミッション、働く環境、社員の魅力などを一貫性のあるメッセージとして継続的に発信し、候補者にとっての「企業のファン」を増やしていく意識が求められます。魅力的な採用サイトやオウンドメディアの運営、SNSでの情報発信などが有効です。
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